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21世紀の啓蒙

帰省した娘と話をしていたら「ズボンはなぜズボンという?」という話が出ました。スマホでさっと検索すると、ポルトガル語のジュポン(女性の長下着)が語源なのですね。

 私が子供の頃だったら、これを調べるために図書館に行って、百貨辞典のコーナーから重い本を引っ張り出して探したはずだから、便利になったね!と言うと、「なに昭和っぽいこと言ってんの?!」と笑われました。

 でも本当に便利になりました。いちいちあげることはしませんが、この数十年のテクノロジーの進歩にはびっくりします。テクノロジーの進歩はわかるけれど、これが本当にみんなのためになるのか。このまま世の中が進んで行ったとき人間は幸せになれるのか?こういう疑問を持つ人が増えてきました。

 スティーブンピンカーさんは世界的に著名な言語学者、心理学者です。人類の現在から未来までを語るためには、まず過去から現在までの様々なデータを分析する。観念的、抽象的な議論ではなく、事実に立脚して議論を深めていく。これを徹底して書かれたのが本書「21世紀の啓蒙」です。

 その結果は帯書きにあるように「わたしたちは今、史上最良の時代を生きている」ということでした。ネットやメディアの情報から受ける印象と違うと感じる方が多いかもしれませんが、各種のデータがこれを教えてくれます。

新聞に「今日も幸せでなにごともなく過ごせました」と書いても誰も読まない。とよく言われます。悲観的な意見の方が誠実で現実的だと私たちは思いがちですが、ピンカーさんはそれが人間がもともと抱えている心理学的バイアス(そう思ってしまう心のくせ)だと指摘しています。

 明日は明日の風が吹く。でもきっといい1日になるだろう。世界は良い方向に進んでいる。

 そう思って生きていける。知的であるとともに勇気を与えてくれる本です。

 さて新しい年が始まります。わたしたちの一日一日が新しい経験です。来年が皆様にとっても良い年でありますように。
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