多彩なるボディワークの世界(8)自彊術

自彊術(じきょうじゅつ)

 

 やはり大正時代に中井房五郎という人が考え出したのが自彊術です。この人は一種の天才治療家(今でいう整体に近い)で四国で鳴り響く存在でしたが、子供のころ神隠しに会ったときに神仙から治す力を授かったとうわさされたり、マーケティングもじょうずだったのかもしれません。

 

 治療技術(他彊術)のほかに、ホームエクササイズとしての自彊術を生み出したのはさすがと思わざるを得ません。リズミカルにからだのあちこちを動かす体操が第1動~31動まであります。全部やると30分近くかかるのが忙しい現代人には難点ですが、中身はよく考えられています。また、NHKのラジオ体操の原点とも言われていて、十条にある十文字学園(中高)では校技として行われています。

 

医大教授激賞の100年体操自彊術 (わかさ夢ムック)

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自彊術解説本のうち、比較的新しくわかりやすい本です。

 

おわりに

 

 世界中で行われている「体操的な」ものすべてがボディワークです。ある日おとうさんが思いついた体操だってボディワークになりえるのですが、そこに何らかの理論・概念があり、行ってみれば参加者が納得できる効果があり、人にも教えられるメソッドが確立されていることが必要です。

 

 その意味では太極拳・バレエ・ジャズダンス・フォークダンスも、日本舞踊や阿波踊りもボディワークです。

 

 先日、僧侶の患者さんとお話しして思ったのは、生老病死の苦しみを何とかしようとしておしゃかさまが修業した結果、最後にいきついた座禅もまたボディワークといえます。病気やけがそのものより、病気になる不安、明日はどうなるかという不安が苦しみのもとになっていることはめずらしくありません。ボディワークには、自分のからだだけは自分でコントロールし、改善していけることを実感させる力があります。それがボディワークの魅力です。(終)